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インタビュー

東北大学のお酒「萩丸」の開発

三枝 正彦(さいぐさ まさひこ)

東北大学大学院農学研究科 附属複合生態フィールド教育研究センター

「萩丸」の開発

プロジェクトのスタートは2004年8月。実はかれこれ7~8年前から”東北大学のお酒”が欲しい、しかも大学の名に恥じない最高品質のお酒を作りたい、と考えておりました。それには高い技術を持つ酒造メーカーの協力が必要不可欠です。しかし公的機関である国立大学がある特定の一社と商品開発をするのは好ましくないわけです。そんなことでずっと実現できずにいたことでした。
その後大学が独立行政法人化したことにより、東北大学にも縁の深い株式会社一の蔵(鈴木和郎代表取締役会長・農学研究科修士S40年修了)にご協力を頂き、また東北大学の創立100周年を契機に、ついに「萩丸」の開発をスタートすることになりました。

こだわり

“東北大学のお酒”と銘打つのだから、酒米から販売まですべて東北大学に縁のあるものにしたい。そこで酒米は、本学卒業生の松永和久副場長(農学部S46年卒)を中心に古川農業試験場において開発し1997年に農林省に登録された宮城初の酒米「蔵の華」を使用。栽培は東北大学農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター(旧鳴子町)と同生命科学研究科附属湛水生態系野外実験施設(旧鹿島台町)で。麹菌および酵母の選定、醸造管理は、東北大学農学研究科生物産業創成科学専攻五味勝也教授の指導の下で。さらに蔵元、ネーミング、販売にいたるまで、一貫して東北大学の関係者が関わることにこだわりました。

専門技術と「萩丸」の味

私の専門は栽培植物環境科学、土と作物と環境についての研究をしております。「萩丸」の酒米である「蔵の華」を栽培した鳴子という土地は、中山間地のために日隔差が大きく、良い米がとれるというメリットがあります。一方で冷害に遭いやすいというリスクもあるのですが、冷害に備えてポット苗で栽培するなどの今までに研究開発した技術をとり入れ、またリスクを分散させるべく旧鹿島台町の生命科学研究科附属湛水生態系野外実験施設でも同時に栽培するなどして、できるだけ冷害の影響を受けないようにしました。
幸い今回のお米は非常によい出来で、「予期した以上に美味しいお酒ができた」と一の蔵の櫻井武寛社長から評価を頂き、先行発売された生酒については、試飲した方々より「ワイン感覚で飲める」「非常に飲みやすく美味しい」と好評を頂きました。

「萩丸」のこれから

東北大学創立100周年を記念して作られたものではありますが、これからも継続して作り続けていきたいと思っております。また五味勝也先生が携わった麹菌のゲノム解析も昨年終わりましたので、こうした研究を反映させて東北大学オリジナルの麹菌を開発し、更にまた新しいお酒を作れるようになるかもしれません。

東北大学同窓生に一言

※現在、東北大酒「萩丸」は人気のため入手が困難になっております。予めご了承下さい。

欧州の大学では”ユニバーシティ・ワイン”というものがあります。日本なら日本酒で、と作ったのが「萩丸」です。国際学術交流にも貢献できるものと思っております。また東北大学の方々は非常に研究熱心な方が多いですが、美味しい「萩丸」を飲んでたまにはストレス解消をしたり、また今のフィールドセンター、旧東北大学附属農場で栽培された米で作った正に東北大の香りのするお酒ですから、このお酒を楽しみながら母校に思いを寄せて欲しいものだと思います。

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