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インタビュー

バランス感覚に優れた、柔軟思考で拓く道

医学の先端研究に挑み続け、東北大学加齢医学研究所長、東北大学附属病院診療科長として、また東北大学創立百周年の広報活動に尽力されて以後、萩友会広報委員会委員長として、マルチな活躍をされてこられた福田寛教授。今年の2013年3月に惜しまれつつ東北大学を退職され、現在は東北薬科大学でこれまでの研究を続けられる一方、次世代の育成を担っておられる。東北大学で過ごされた日々を顧みながら、大学に寄せる想いを語って頂い

福田 寛(ふくだ ひろし)

東北薬科大学放射線核医学教室 特任教授 東北大学医学部1974年卒業

世界を先駆する、学際的研究に挑戦

今年(2013年)4月から東北薬科大学で、研究と教育にあたっています。研究は、東北大学時代の脳の画像研究などを継続しています。授業の方は、画像医学を担当し臨床画像などを教えています。

 

東北大学に在職中は、さまざまな研究に取り組みました。その主要な研究としては、大きく3つの柱になります。
一つは熱中性子を使ってガンを治療するホウ素中性子治療の研究ですが、スタートは約40年前で基礎研究から始めました。二つ目はPETによるガン診断研究です。1980年位にスタートさせ、世界のパイオニア研究と言えます。30年以上、手がけましたね。この診断法が2002年に保健診療に採用された時は、大変うれしかったです。
最後は、健康な脳のMRI画像のデータベース化による、脳の発達と加齢に関する研究です。これは、光ファイバーで研究室間をつないで、高速通信環境を利用してMRI画像を集める研究プロジェクトとして、1997年にスタートしました。現在も別な形で継続しています。

全共闘世代ならではの、東北大学の思い出

私は1968年に医学部に入学した、まさに団塊+全共闘世代です。従って、学園紛争が燃え上がり教養部の授業が1年生の真ん中位から無くなったりして、落ち着いて勉強する雰囲気ではありませんでした。講義棟が半年位、封鎖され、授業がストップ。2000人以上の機動隊が来て、封鎖解除。それで1月から4月位まで授業を受けて、ようやく進学しました。
教養部時代は、男声合唱団に入って活動していました。団員が60名以上いて、大学間の交流も盛んでした。それから、医学部のバレー部にも入っていて、私はレギュラーにはなれませんでしたが、医学部だけの東日本の大会で金メダルを取りました。

 

学部に入りようやく落ち着いて勉強するようになり医学部を卒業しました。臨床系の大学院に進学し臨床の現場に出ましたが、なかなか思うようにいかず、随分看護師さんに助けられました。
研究は放射線生物学に取り組み、がんのホウ素中性子治療の放射線効果を定量的に調べていました。これは工学系や理学、薬学系との学際的研究で、1974年当時は珍しかったです。独創的で新しいことに着目する松澤大樹先生に師事したので、かなり感化されましたね。
私の研究はいずれも先駆けていて、当初はマイナーなもので、結果を出すのに時間がかかったりします。まぁー、粘り強い性格に助けられたように思います。

帰属意識のさらなるアップへの取り組みを

東北大学の広報に関わるようになったのは、東北大学100周年記念事業実行委員会を立ち上げた頃です。私はこの委員会の広報・記録ワーキンググループを統括することになり、100周年記念事業ニュースを発行。その次に手がけたのはメールマガジンの発行です。東北大学は各部局の同窓会が強く、全学の同窓会としてまとまりにくいとされていたので、メールマガジン発行開始の際には大西仁理事(当時)とともに各部局長を訪れて説明して回りました。
また、当時、ネガティブな出来事に関する広報のルールづくりや、スポークスマンのあり方なども東北大学としては初めて取り決めました。

 

2008年3月に100周年記念事業が終了した後は、メールマガジンは同窓生への広報活動の一環として位置づけられました。ただし、その資金が無いので、広報担当の杉山一彦理事(当時)にお願いしてつなぎ資金を確保したことを思い出します。
まもなく萩友会が立ち上がり、今度はその広報委員会の委員長を担うことになり、メールマガジンや会報の発行と萩友会のいろいろな行事に携わって、定年まで続けました。

 

広報活動に関わるようになって約10年。担当理事は4人代わられました。並外れた教養の持ち主、大西仁元理事、民間企業から来られたビジネスとリスク管理の達人、杉山一彦元理事、理学部出身の文学部教授で博識の高い野家啓一元理事、若々しくフットワークがいい青木孝文副学長と、それぞれの方から学ぶことも多かったです。

 

当時、よく議論したのは、東北大学への帰属意識が皆、低いということでした。それでも、メールマガジンを発信したり、ホームカミングデーなどを開催したり、昔よりは大分良くなってきていると思います。
今後も、この帰属意識、仲間意識をどうアップさせていくかが、大きな課題でしょう。同窓生同士のネットワークを大事にするためのしかけづくりには萩友会が要になりますし、広報活動も企画力と実行力を両輪にさらに充実させていってほしいと願っています。

●プロフィール
1974年 東北大学医学部卒 1978年 東北大学大学院医学研究科修了 1989年 放射線医学総合研究所臨床研究部室長 1990年 東北大学抗酸菌病研究所教授 1993年 東北大学加齢医学研究所教授 1990年-2013年 東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター出張診療所長(PET臨床研究) 2006年-2012年 東北大学加齢医学研究所長 [受賞歴] 1984年 日本核医学会賞 1990年 第4回国際中性子捕捉治療学会優秀研究者賞 2003年 日本国際賞審査委員